特集記事 肥前のやきもの2

  • ●代表的な肥前のやきもの(有田焼、伊万里焼)

     

    ●有田焼
    有田焼(ありたやき)は、佐賀県有田町を中心に焼かれる磁器です。その積み出しが伊万里港からなされていたことにより、「伊万里(いまり)」とも呼ばれます。作品は製造時期、様式などにより、初期伊万里、古九谷様式(こくたにようしき)、柿右衛門様式(かきえもんようしき)、金襴手(きんらんで)などに大別されます。また、これらとは別系統の献上用の極上品のみを焼いた作品があり、藩御用達の藩窯で焼いた鍋島藩御用のものを「鍋島様式」、皇室に納められたものを「禁裏様式(きんりようしき)」と呼んでいます。江戸時代後期に日本国内各地で磁器生産が始まるまで、有田は日本国内で唯一、長期にわたって磁器の生産を続けていました。
    KA002A※古伊万里様式例

     

     

    ●伊万里焼
    近世初期以来、有田、三川内(長崎県)、波佐見(長崎県)などで焼かれた肥前の磁器は、江戸時代には積み出し港の名を取って「伊万里」と呼ばれていました。また「IMARI:伊万里」はオランダ東インド会社「VOCの印」とともに世界的に有名な焼物の総称でした。英語での呼称も “Imari” が一般的です。
    明治以降、輸送手段が船から鉄道等の陸上交通へ移るにつれ、有田、伊万里、三川内(長崎県)、波佐見(長崎県)などで焼かれた肥前の磁器は、有田の商社から送り出すようになったので、積み出し地の名称をとって、有田焼と呼ばれるようになりました。
    現在では、有田地区の製品を「有田焼」、伊万里地区の製品を「伊万里焼」と産地の呼称で区別しています。
    H07023A※伊万里焼 例

     

     

    参考文献:
    著者/大矢野栄次「古伊万里と社会」同文舘出版株式会社、1994年
    著者/文・大橋康二 写真・松尾宏也「日本のやきもの◆窯別ガイド◆有田 伊万里」淡交社、2002年