特集 真右ヱ門窯(しんえもんがま)和食器、洋食器、花瓶/美術品、陶板など

  • 「ぐい呑は、作り手にとっても、とても思い入れをもって作るものだから、その作家の特徴が色濃く出てるものです」と2代目真右ェ門の馬場九州男さんは語ります。
    “作家の器を何かひとつ欲しいのだけれど”と相談されたときは、
    「まず『ぐい呑』からが良いんじゃないか」と勧められるそうです。
    その真右ェ門窯(馬場九州男さん)の「ぐい呑み」のご紹介です。

     

    【真右ヱ門窯について】
    昭和四七年 初代真右ヱ門(馬場真一郎氏)が当時としてはまだ数少なかった焼き物の大物造りに思いを馳せ、「真右ヱ門窯」を興します。
    初期には、「染め付け」の大物(二尺~三尺高)を造っていましたが、次第に窯変物(ようへんもの)へと変わっていきます。
    特に釉薬、「辰砂(しんしゃ)」との出会いは後の真右ェ門窯に大きな影響をもたらすことになりました。
    最近では「造りの冴え、釉の妙」と呼ばれる技の数々を器に施し、特にルビー色の「辰砂」や「結晶釉(けっしょうゆう)」などの窯変物(注:窯の中で独特の変化を起こす釉薬の彩を楽しむもの)を中心に、釉薬(ゆうやく)を巧みに操る「釉彩(ゆうさい)」の技法を得意とする窯元になっています。
    平成19年、    馬場九州男氏が「二代真右ェ門」を襲名し現在に至ります。

    【釉薬について】
    陶磁器の表面をおおっているガラス質の部分を釉薬(ゆうやく)といいます。
    真右ェ門窯の技の最大の特徴は、窯の中で熱によって化学変化を遂げる釉薬(ゆうやく)の、多種多様な色彩の使い方、その美しい窯変の技でしょう。

     

    ●辰砂

    S1008FS2008F S3008FS1008F-1

     

    釉中(ゆうちゅう)に含まれる銅分が、窯の中で強い炎の中で、天然鉱物の硫化水銀と還元し発する赤色を「辰砂」といいます。
    明朝の時代には、「宝石のような美しさ」とも言われ高く評価されていました。
    辰砂には淡い辰砂から濃い辰砂まで様々ありますが、真右エ門窯が目指している辰砂の仕上がり色は、濃厚なルビー色です。
    厳選された磁器のみを素材に使用し、1300℃の窯の中で、長い時間をかけて焼きあげられる「神秘的な赤の世界」を作り上げる技が真右ヱ門の使う「辰砂」です。
    辰砂は、釉薬の調合や火の強弱、窯の状態、などのさまざまな条件により微妙に色合いが変化する大変難しい釉(=うわぐすり)であり、それゆえこの真右ヱ門の「深いルビー色」こそ、辰砂のもつ彩の可能性を知らしめてくれるものであり、また、真右ヱ門の技の真骨頂を見せてつけくれる釉薬ともいえるのです。真右ヱ門の器のメインカラー、気高き「深いルビー色」をご堪能ください。

     

    ●均窯

    S1007FS2007FS3007FS1007F-1

     

    国北宋時代の名窯のひとつ「均窯(きんよう)」で多く焼かれたことからついた呼名で、その出色は緑から赤まで多種多様です。
    代表的なものに「月白均窯」「紅紫均窯」「呂均窯」などが有ります。
    均窯の器は、古来中国では「貴人の器」として重宝されてきました。

     

    ●油滴天目

    S1004FS3004F S2004FS1004F-1

    漆黒の釉中に、まるで油の滴が浮いているかのように銀白色や金茶色の結晶が現れたものを「油滴天目」といいます。
    古来茶人のあいだで「燿変(ようへん)」につぐ銘品として珍重されてきました。
    油滴天目は窯の中で割れ易いことから土物に釉をほどこした作品が多いのですが、真右ヱ門窯はあえて磁器で制作している技が見ものです。
    油滴天目の気品の高い美しさは専門家でなくても、知られるところで、
    時代劇などに「天目台」という台の上に天目茶盌を乗せて差し出されている場面をよくみかけることからも、おもてなし使いの器であると認識されていたようです。
    油滴天目茶盌は、南宋の陶工が皇帝や士大夫階級といわれる知識人の求めによって作り残したものと伝えられます。
    神秘的な美しさと魅力をはなつ油滴天目は、単に目を楽しませるだけではなく、
    心を研ぎ澄ました時、宇宙深奥の景色を読みとることができる色、として重宝されてきました。
    「すべてをつつみこみ昇華する黒」、それこそが、宋の時代にこめられた深い精神性だったのです。

     

    ●藍染水滴

    S1002FS2002FS3002FS1002F-1

    水に浸すと輝きをます結晶の連なりが美しい釉(=うわぐすり)であり、この釉を使った器は、「様々な景色を連想させてくれる」作品群となっています。

     

    ●瑠璃水滴

    S1006FS2006FS3006FS1006F-1

    深淵で奥深い蒼の色。
    大自然の神秘、窯変によって生み出されるブルーは「心を清め美しい品格を磨いてくれる成熟した海の色」と言われています。

     

    ●桜花紋

    S1003FS2003FS3003FS1003F-1

     

    この釉を使った器は、「青紫の空に光がしたたる中、麗らかに咲き誇る桜の花びら」を連想させる作品群であり限りなく情感を高めてくれる傑作たちです。

     

    ●金華紋

    S1001FS2001FS3001FS1001F-1

     

    山吹色に発色する結晶釉。
    「時には小さな玉のように、時には大きな花びらのように」美しく結晶を生成する釉です。

     

    ●銀河

    S1009FS1009F-1

    二代真右ヱ門は油滴天目の再現だけではなく、まったく違うアプローチから独自の「天目」を追求してきました。
    それが、「銀河」です。
    そもそも天目釉とは鉄釉(てつゆう)を使い、これが生地の違い、焼成の違いによって半ば偶然に生まれるものですが、二代真右エ門は確かな科学的な視点と技で「夜空の満点の星」を確実に産み出すことに成功しています。

     

    ●彩雲

    S1010FS2010FS3010FS1010F-1

    真右ヱ門が「空を赤く染め上げた彩雲」をイメージして制作した釉です。

     

    ●鶯玉

     S3005FS2005FS3005F-1

    真右ヱ門が初代から受け継がれている釉であり、「様々な、豊かな景色変化を楽しめる玉」を連想させる釉です。
    これを用いた器は、穏やかな色彩が心を癒してくれる作品群となっています。

     

    【有田焼とは】
    有田焼(ありたやき)は、佐賀県有田町を中心に焼かれる磁器のことです。その荷積み出しが伊万里港からなされていたことにより、「伊万里(いまり)焼」とも呼ばれていました。現在は製品を産地の呼称で呼ぶ場合が多くなっているため、当サイトでは現在の有田地方で作られたやきものを「有田焼」と呼ぶことにしました。作品は製造時期、様式などにより、「初期伊万里」、「古九谷様式」、「柿右衛門様式」、「金襴手(きんらんで)」などに大別されます。江戸時代後期に各地で磁器生産が始まるまで、有田は日本国内で唯一、長期にわたって磁器の生産を続けていた生産地なのです。